自然災害備えてる? 中小企業の事業継続力強化計画 (BCP) と財務会計システム対策

財務会計システム
自然災害備えてる 中小企業の事業継続力強化計画 (BCP) と財務会計システム対策

2022年3月16日。
仙台市で震度6強を観測した地震は、10年前の東日本大震災を彷彿とさせられました。

日本は元来、地震、津波、噴火、水害、豪雪など、自然災害が多発する国です。特に地震に関しては、「南海トラフ地震」や「首都直下地震」が、今後30年の間に80~70%の確率で起こることが予想されており、中小企業は対策を余儀なくされています。

そこで近年、「事業継続力強化計画(BCP)」という考え方が注目を集めるようになりました。

BCPとは、中小企業庁の定義によると、「(自然災害などの)緊急時に行うべき行動や、緊急時に備えて平常時に行うべき行動をあらかじめ整理し決めておく」ことを指します。

東日本大震災においては、BCPを実施していなかった中小企業は、実施済の企業に比べ、復旧までに3倍の日数を要したほか、営業再開の遅れによる取引先の流出により、倒産・解雇に見舞われるケースが多かったというデータがあります。

BCPは、災害による被害を軽減するだけでなく、経済全体への影響をできるだけ抑えられる効果が期待できることから、中小企業庁が主体となって普及に取り組んでいます。

注目したいのは、BCP認定制度が設けられている点。認定を受けた中小企業は、税制措置や金融支援、補助金の加点などの優遇が受けられるという、ちょっとしたメリットがあるのです。

BCPの策定とは、具体的にどのような手順で行えば良いのでしょうか?
この記事では、そんなBCPの策定の手順や、運用方法に、中小企業向け財務会計システムをからめてにご紹介していきます。

5ステップで完成 中小企業のBCP策定手順

BCPの認定を受けるにあたっては、A4用紙で5枚程度の申請書を記載する必要があります。項目数は多いですが、以下の5つのステップを踏むことで埋めることができます。

ステップ1 何のためにBCPを策定するのか? ― 目的を考える

目的の部分では「経済社会に与える影響の軽減についての視点」が盛り込まれているかが重視されます。これは、ヒト・モノ・金・情報の4つの視点でイメージすると比較的考えやすいです。

例えば、地震が起こったと想定した場合の、業務に対する影響を考えてみましょう。

1名体制で経理を担当していた職員が負傷し、業務が停止(ヒト)。津波による浸水で倉庫の製品は全滅(モノ)。保険に未加入のため設備の復旧に数年を要する(金)。財務会計システムのデータサーバーは浸水により復旧困難(情報)。

以上から連想するに、BCPの目的は、人命(社員・顧客)を守る、経営の維持、顧客の信頼を維持し、供給責任を果たす…などが考えられます。

ステップ2 自社は、どのような災害にあう可能性があるか?

各市町村ハザードマップを参考に、自社でどのような災害が起きる可能性があるか想定します。

被害を想定する際は、自社の状況と照らし合わせることが重要です。
従業員の出勤不可、建物への被害、運転資金の不足、財務会計システムなどのデータ破損、など、事業の継続を阻害するものに何があるのかをピックアップし、計画に盛り込んでいきます。

ステップ3 災害発生時の対応を検討する ― 初動対応・事前対策

ここでは、ステップ1、2で想定した、業務に対する阻害要因の解決方法を検討します。

対応策は、初動対応と事前対策の2つに分けて記載します。

初動対応では最低限、従業員の避難・安否確認、被害状況の把握、社外への連絡方法を検討し、体制を整えておく必要があります。避難場所の設定や緊急連絡先リストの作成、災害対策本部の構成なども該当します。

事前対策では、スムーズな初動対応を行うための具体的な内容を詰めていきます。例えば、業務の属人化を避ける、建物の免震・制震装置の設置、融資や保険の検討、財務会計システムのクラウド化などがあります。

ステップ4 計画を推進するために必要な設備や提携先を考える

税制優遇を希望する、設備や備品の情報を記載します。計画を達成するのに必要と認められた設備には、法令により税制上の優遇措置が与えられます。対象品には、排水ポンプ、免震装置、自家発電機などがあり、資金力にゆとりが無い中小企業とっては頼もしい制度です。

また、計画に協力してくれる関係会社、金融機関、中小企業団体などを記載する欄もあります。遠方の関係会社と協力し、どちらかが災害に見舞われた時に相互で業務を委託する契約を取り交わすなどの対策があれば、こちらに記載します。

ステップ5 PDCAサイクルをまわす

非常時に社員ひとりひとりがスムーズに行動するためには、平時の訓練が不可欠です。計画を定期的に見直すことで、内容がよりブラッシュアップされていきます。

いつかは訪れる災害に向けて 中小企業こそBCPの策定を

災害は、いつ、どこで発生するか誰にも分かりません。しかし、ひとたび災害に見舞われた時、事業中断がそのまま倒産・廃業に直結するケースが多いのが中小企業です。

BCPを策定することは、従業員ひとりひとりの命を守ることであり、企業が絶え間なく事業を続けることでもあります。

緊急事態を生き抜くために、一つでも多くの中小企業が、BCP策定の輪を広げていただければ幸いです。