財務会計システムを導入している、中小企業の割合をご存知でしょうか? 答えは、約50% ― 半々ですね。これは、2021年8月に株式会社マネーフォワードが、従業員規模100名以上の企業1,320社を対象に行った調査によるものです。
では、中小企業向け財務会計システムを導入していない、残りの50%はどうしているのかというと、以下の2パターンに分けられます。
・システムやソフトウェアを、まったく使用しない方法
・Excelなどの表計算ソフトを使用する方法
財務会計システムを使用することが、当たり前の企業からすると「システムなしで経理業務が成り立つなんて信じられない」と思われるかもしれませんね。 しかし、筆者は過去、財務会計システムを全く導入していない中小企業に勤務したことがあります。 この記事では、そんな中小企業にスポットをあてて、システムがない場合の経理業務ってどうするの?をテーマにお話したいと思います。
中小企業というより個人商店? 昔ながらの伝票会計
システムやソフトウェアを使用しない方法に、伝票会計があります。 伝票会計なんて、簿記3級の試験にしか出てこないだろうと思っているそこのあなた。この世には、今もなお、伝票会計をつづける化石のような中小企業が存在するのです。 私の中では、伝票=「自営業の人が、確定申告のときに作成するもの」というイメージがあります。なので、前任者からの引き継ぎで伝票が出てきた時は、けっこう衝撃でした。一言お断りしておきますが、これは昭和の話ではありません。れっきとした平成30年代のお話です。 伝票の作成は大変面倒です。文字はすべて手書き。勘定科目はゴム印で1個1個押印。間違えたら、二重線で消して訂正印。書き終えたら紐でしばって、税理士に郵送して…。昭和の個人商店でしょうか? 伝票会計を導入した背景は定かでないのですが、どうやら当初、有名どころの財務会計システムを導入するつもりが、初代責任者が、「使いこなせない」と突っぱねたのが理由のようでした。 しかし、後から入社した社員からすれば、迷惑きわまりないことです。 結局この手書きの伝票は、後に、財務会計システムが導入されるまでの4年にわたり続きました。今でも小さな文具店で、勘定科目が書かれたゴム印を見ると、当時の苦労が思い出されます。
中小企業の救世主! Excelを使用する方法
Excelは神です。 これ1本で、見積書の作成から、発注・請求管理、売上分析まですべて出来ます。 そのせいか、中小企業はExcelが大好きです。 しかし、何でもかんでもExcelで作るのは考えもの。決算のように、データの横のつながりが求められる作業とになると、それなりの操作知識が必要になってきます。
Excelは、財務会計システムの代わりになるのか
結論からいえば、「代わりにならない事もないが、手数がとんでもなく多くなる」です。 ふたたび、筆者が勤務していた中小企業の話になりますが、そこは税理士に月次会計を委託しており、経理業務を行う際は、伝票作成にプラスして、現金預金、仕入、売上の記録をExcelで行っていました。 表に入力するのは、(借方) 現金 xxx / (貸方) 売掛金 xxx といった、いわゆる仕訳のほか、掛代金の決済状況、在庫の金額などです。 さて、このデータが後にどうなるかというと、なんと高い手数料を支払って、会計事務所内の財務会計システムに、イチから入力し直すのです。 すごい無駄ですよね。 なぜ、こんな二度手間をしていたのか考えましたが、こんなところでしょうか。
・財務会計システムで何ができるのかを、責任者が理解していない
・現状システムの問題点を認識していない。
・ 決算業務を、税理士に丸投げしている。
しかし、実務担当者としては、複雑な気持ちがします。 毎月時間をかけてExcelのデータ入力をしているものの、苦労の割に実入りが少ない気がする。スキルもまったく身につかないので、これでは、毎日の仕事も嫌になってしまいますよね。
中小企業だって、財務会計システムは必要だ
別の調査によると、財務会計システムの導入を躊躇する理由のトップ1に「現状のシステムに不満がない」があがっています。
参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「小規模事業者等の事業活動に関する調査」
果たして、本当にそうなのでしょうか? 経理業務の実情を一番知るのは、実務を担当する一般社員です。 現状のシステムの問題点を洗い出すことは、業務効率の改善にもつながります。 もし、あなたが財務会計システムに興味をお持ちなら、まずは少しでも良いので、システムの導入により何が変わるか調べてみてはいかがでしょう?