財務会計システムで楽して老人だらけの中小企業でのんびり働いていた話

財務会計システムで楽して老人だらけの中小企業でのんびり働いていた話 財務会計システム
財務会計システムで楽して老人だらけの中小企業でのんびり働いていた話

中小企業が高齢化に悩まされていることをご存知でしょうか?

東京商工リサーチの2020年12月時点のデータによると、全国の社長の平均年齢は62.49歳で、うち70代以上が31.8%。業種別に見ると、農協や漁協などの協同組合、信用金庫などの金融業、学校教育業といった、特に昔ながらの業種に高齢化の波が押し寄せていることが分かります。

休業・解散時点の社長の年齢に着目すると、平均年齢は70.23歳となり、中小企業の後継者不足が背景にあることが伺えます。2020年11月に行われた後継者不在率調査によると、57.5%の中小企業経営者が後継者不在と回答しているそうです。

思い起こせば、筆者が以前勤めていた中小企業はその典型です。社長の年齢は72歳。以下、社長の側近82歳、運転手65歳、一般社員65歳、55歳と、そこはまさに老人の園。20代の女性は私ひとりということもあり、可愛がっていただいた反面、ジェネレーションギャップに戸惑うことが多くあったものです。

この記事では、そんな老人の園で私が体験した、財務会計システムにまつわるエピソードをひとつ紹介します。

財務会計システムに助けられた新米経理

老人の園で私が与えられた仕事は、社長の秘書 兼 経理です。

秘書というと聞こえはいいですが、その実態は単なる家政婦。社長がりんごを食べたいと言えば、雪の降る中スーパーに走り、社長のシャツにシワが寄っていれば、無人の会議室で黙々とアイロンをかけるという具合です。

経理方面はお粗末なもので、月末になると慌てて、たまったレシートを財務会計システムにちまちま入力するという状況でした。

私は簿記の知識がない状態で経理経験をスタートしましたが、当時利用していた財務会計システムの賢さに随分と助けられました。

財務会計システムには、勘定科目の自動予測機能という素晴らしい機能があります。自動予測機能とは、支払先の情報を記憶し、それに合う勘定科目を自動で表示してくれものです。月々の支払先が固定されているような中小企業にとっては、無くてはならない機能といえます。

仮に自動予測機能が不発であっても、財務会計システムには過去のデータを参照できる機能があります。紙のファイルだと時間のかかる作業でも、財務会計システムであれば、ボタン一つで完了です。デイリーの仕訳であれば、大抵は過去データに同じような取引が記録されています。

こうして私は、財務会計システムの知能と、過去データのコピペを駆使して、経理初心者ながらも何とか業務を回していたのです。

財務会計システムが使えるだけで優秀認定

経理業務をする中で、嬉しい誤算が一つありました。それは、老人だらけの環境ゆえに、ほんの少し財務会計システムを使えるだけで「何だか分からないけどすごい人」認定してもらえる点です。

その中小企業では、60歳超えが8割超という特殊な環境でしたので、パソコンを使える人間が限られていたのです。社長(72歳)はパソコンが使えない側の人間で、社外に手紙を出すときは、ほぼ私が社長の手書きの文書をワードで清書していた程です。

社長の側近(82歳)もパソコンが使えず、時おり財務会計システムをいじる私の横に来ては「君は本当にすごい。俺は大抵のことは何でもできると思っているが、唯一、ものを作ることとパソコン操作は駄目なんだ」と持ち上げてくれた記憶があります。

やっていることは本当にたいしたことじゃないのに褒められると、複雑な反面、やる気に繋がります。最初は経理なんて絶対に自分には務まらないと思っていましたが、財務会計システムで褒められたことをきっかけに、もう少し経理について勉強してみようという気になったのです。今思えば、これは側近(82歳)の策略だったようにも思います。

財務会計システムをきっかけに経理の道へ

私はいま、別の中小企業で経理の仕事をしています。

以前勤めていた老人だらけの中小企業は、社長の引退により、あっけなく解散しました。中小企業が後継者不足にあえぐ実情を、身をもって体験したのです。

財務会計システムをきっかけに簿記の勉強を始めた私は、その後簿記2級を取得し、経理の仕事を続けていくことに決めました。(秘書は柄でも無いのでやめました)。今は税理士の資格を取ろうと思い立ち、細々と勉強をしています。

財務会計システムは、しがない中小企業でのんべんだらりと過ごしていた私に、専門知識を学ぶ機会を与えてくれました。たかが財務会計システムで何を大げさな、と思われるかもしれませんが、そこで勉強したことが契機となり、今の仕事に就けた訳です。

人生何が役に立つか分からないものだ、とつくづく思います。